全道各地で急速に巨大風力発電の建設が進められているなかで、地元住民から自然や景観破壊、土砂災害や健康被害などの反対の声が起こり、巨大風力発電中止を求める運動が広がっています。
今年6月17日には、小樽市と余市町にまたがる毛無山付近に巨大風力発電の建設計画を進めていた東京の双日株式会社が計画中止を発表。直前の13日には迫俊哉小樽市長が市民の声に後押しされ反対を表明していました。
市民の反対の声と運動が中止に追い込みました。
運動を進めていた「小樽余市の巨大風力発電から自然と生活を守る会」の高野敏明事務局長に、話を聞きました。
――会を結成したきっかけを教えてください。
双日(株)が巨大風力発電の計画を発表したのが2020年でした。計画の危険性は当初から指摘されており、前代表の平山秀朋氏が小樽市内の社会活動団体や市議会各会派を周る中で、建設反対の市民が集まり、2021年に「小樽余市の巨大風力発電から自然と生活を守る会」が結成され、市民に向けて署名や宣伝活動を開始しました。
――計画中止が発表されました。どんな運動を進めたのですか?
街頭での署名、宣伝活動だけでなく、風車建設により土砂災害や自然、景観の破壊が懸念されていた現地の登山口にポスターと署名を設置したり、登山者との対話署名も行いました。また、フォーラムや学習会、会社に対して住民説明会の開催要請などやれる限りのことをやってきました。
同時に、市への働きかけも進めており、迫小樽市長との現地視察や昨年の小樽市長選では「市長候補者に環境政策を聴く会」を開催し、候補者と懇談を重ねるなど計画の問題点や市民の反対の声を伝えてきました。
――巨大風力発電の問題点について教えてください。
大きく3つの問題点があると考えています。
一つは、建設される風車が大きすぎる、そして多すぎるという問題です。小樽・余市の塩谷丸山は年間1万人が訪れる観光スポットですが、そこから見える毛無山を中心に札幌テレビ塔よりも大きい200mもの巨大風車を27基も建設すれば、景観が損なわれるは当たり前だと思います。
二つ目は建設に伴う国有林の大規模開発です。事業計画区域には、水源涵養保安林でもある国有林があります。開発を進めれば、動植物への影響もありますが、区域内には土砂災害の危険個所があり、土砂崩れの心配も予想されました。
そして三つ目は住民の暮らしと近すぎるということです。風車から最も近い忍路中央小学校・忍路中学校までは約3110m、最も近い福祉施設までは約3070mと近く、巨大風車から発生される低周波音による倒壊事故、落雷による火災の可能性も危惧されます。
また、道内で建設されようとしている多くの巨大風力発電がそうですが、発電した電気は本州へ優先的に送られる仕組みになっており、地元のための事業になっていないのが大問題です。
――今後の活動で考えていることはありますか?
この会は、双日(株)が進めようとしてきた巨大風力発電の中止を目的に活動してきた会なので、会としての活動は終了となります。しかしなお大手企業による巨大風力発電が小樽や余市の山や海に計画されており、危険は去っていません。
会は、9月2日に田鎖順太北海道大学大学院工学研究院助教を招き、市民報告会を開催し、これまでのみなさんの運動と成果を語り合うとともに、地元無視の大規模な開発ではなく、住民の利益を優先する自然エネルギーの活用を考える場にしようと準備を進めています。
今、北海道で進められているのは大企業の利益を優先した自然破壊、環境破壊型の再エネ推進で、このままでは北海道は「エネルギーの植民地」となってしまいます。そうではなくて、ヨーロッパなどで進められている「地産地消」の再エネの実現を目指すべきだと考えています。
ぜひ、市民報告会にお集まりください。
(「ほっかい新報」8月6日付より)