統一地方選挙後最初の定例会となる第2回定例道議会が6月22日から7月14日まで開かれました。

 提案された補正予算では、鈴木直道知事2期目の目玉政策である「ゼロカーボン北海道」実現のため、約100億円規模の「ゼロカーボン北海道推進基金」の設置と、次世代半導体量産をめざすラピダス社千歳進出を踏まえ、半導体関連産業の振興として21億6千万円の予算を計上しました。

 日本共産党道議団の真下紀子、丸山はるみ両道議は、ラピダス社選出に伴う道の関与の在り方、税金の使い方について問題点を質しました。

問題①―資金調達は不透明&税金頼み

 ラピダス社は、トヨタ自動車やNTTなど主要8社が2022年に設立しました。次世代半導体「2ナノメートル」生産をめざしています。次世代半導体事業として有望と言いながら、出資額は73億円にとどまり、上場すらされていません。真下道議が資金調達の見通しについて質すと、鈴木知事は「国家プロジェクトの成功に向けスピード感をもって支援する」と答えるだけで、資金調達の見通しを何ら語れません。

 ラピダス社の東哲郎会長は、7兆円ともいわれる事業費について「国の支援を中心に考えないといけない」と発言。投資を呼び込むどころか税金頼みの姿勢が明らかになっています。

問題②―次世代半導体を作って売れるの? 使えるの?

 2ナノメートルの半導体は、世界で未だ量産されたことはありません。国内の半導体は40ナノメートルまでの世界的シェアは40%ですが、それ以上は皆無です。技術的開きがあり、成功できる見通しはありません。

 熊本県に進出が決まっている台湾企業「TSMC」は、3ナノメートル半導体を量産していますが、アップルが必要とする端末の半導体の単価や購入個数を示し、TSMCは利益が出ると判断して量産に踏み切っています。

 一方のラピダス社は、量産すると言っても購入先は一切決まっていません。世界最先端半導体を量産すれば、買い手は後からついてくるという理屈はあまりに無責任です。

問題③―ゼロカーボン北海道の効果が見通せない半導体事業

 道はゼロカーボン北海道実現のための基金を設立し、半導体関連事業への拠出も決めました。道は「次世代半導体生産によりCO2削減効果の高い電化製品が生産されるため」と拠出理由を説明しますが、2ナノメートルを使用した製品を国内で生産する技術は現在の日本にはなく、どのように製品化し、どう販売されるのかもわからない「見切り発車」の状態です。

問題④―北海道の中小企業に恩恵なし?

 鈴木知事は「ラピダス効果を全道に波及させる」と高揚感に溢れています。国は、次世代半導体工場を中核としたエコシステム(関連産業の集積)を目指すとしていますが、北海道の中小企業が参加できる見通しを道は一切示せませんでした。

 ラピダス社は工場立地について「地場の企業さんにご協力願いたい」と語る一方「半導体の前工程の試行実績のあるパートナーに関わっていただきたい」と述べています。実績のない道内企業は初めから淘汰され、恩恵も何もないことになります。

問題⑤―工場排水は安全?

 工場の水の量も確保策も工場排水に含まれる物質の詳細も、現時点で明らかになっていません。丸山道議は、半導体製造で関わりのあるPFAS等は、現行規制ですべてをカバーできない状況にあり、新たな規制基準を設けるべきと求めました。

 道は「国が総合的な対応の検討が行われている」と述べ、現時点で方策がないことを認めました。安全対策が疎かにされたまま工場建設に突き進む道の姿勢が浮き彫りになりました。

日本共産党道議団事務局長 紙谷 恭平

(「ほっかい新報」8月13日付より)