官邸前、福島県農民連政府・東電要求行動でともに声を上げる岩渕さんと紙さん(19・12・20)

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から10年。「原発事故さえなければ」という言葉を何度も聞いてきました。

 原発事故さえなければ、失うことのなかった命があります。家族がばらばらになることも、生業を奪われることもありませんでした。一人ひとりの人生を、日常を、丸ごと奪ったのが原発事故です。

 「事故後、初めて帰った家は、動物に荒らされて住める状態ではなかった。あんなに帰りたいと思っていた気持ちがどこかにいってしまった」と訴えた方。「自宅の立ち入りも墓参りも自由にできない。手入れしてきた山は手つかずのまま。先祖代々引き継いできたものを、自分の代でゼロにされるのは辛いし悔しい。首相にこの荒廃した姿をみてほしい」と話してくれたご夫妻。

 道内でも、福島から避難をしてきたという方々とお会いし、みなさんの話を聞くたびに、「政治を変えたい」という思いを強くしてきました。

 2016年に国会へ送っていただき、初質問のときから、国と東京電力の責任を厳しく追及してきました。商工業者への損害賠償の打ち切りの実態を示し、東京電力から実績を出させ、必要な追加賠償にも応じていないことを質問で初めて明らかにしました。

 集団による裁判外紛争解決手続きによる和解案について、自ら「和解案の尊重」を掲げながら、東京電力が拒否していることを示して、経済産業大臣に迫り、東京電力への指導が行われました。

 国は原発事故を終わったことにし、「支援」の打ち切りを進めてきましたが、これをはね返してきたのが世論と運動です。福島県議会では、新日本婦人の会福島県本部が提出し、共産党県議が紹介議員になった、福島県内原発の全基廃炉を求める請願が全会一致で採択されました。同様の意見書などが県内59市町村すべてで可決され、国と東京電力に廃炉を決断させました。

 福島第一原発で発生した汚染水の処分をめぐって、県議会の他、福島県内の41市町村議会で海洋放出に反対、もしくは慎重な対応を求める意見書があがりました。漁業者は繰り返し反対を表明し、全漁連は反対決議を全会一致で採択しました。国は当初の計画通りに方針を決めることができずにいます。

 原発事故後、「再稼働反対」を求める声は国民過半数の世論となっています。国会では、野党が原発ゼロ基本法案、これを実行するための再エネ推進法案を共同で提案しています。

 新しい社会を求める国民の声が、分断を乗り越え、政治と社会を前に進めてきました。

 多くの方々と手をつなぎ、「政権交代で原発ゼロへ」を合い言葉に、引き続き力を尽くしたいと思います。

――「ほっかい新報」3月7日号――