07年、国連は「先住民族の権利宣言」を発表しましたが、とりわけ日本では先住権を文化振興と普及に限定するなど、宣言の全面実効はこれからの重要課題です。

 5月末に刊行された『イチからわかるアイヌ先住権』は、アイヌ民族の先住権を考える理念と素材を提供してくれる、画期的な労作です。教員や関心のある方はもちろん、若い世代はじめ幅広い方々にぜひ手にとっていただければ、と思いました。

 222頁のこの本は、ラポロアイヌネイションと北大開示文書研究会が共催した、オンライン学習会(21~23年)の7回の講演を元に仕上げました。5月末、浦幌で開催されたサケ漁先住権の国際シンポジウムを記念して発刊されました。

入植植民地の和人の立ち位置?

 本書の内容は、日本におけるアイヌの歴史と先住権、アラスカ先住権の権利行使、アメリカインディアンの闘い、北欧サーミの運動、オーストラリアのアボリジナルの土地権運動、台湾原住民の先住権など、それぞれの国の研究者、先住民からの多彩な報告です。

 それらの具体的な報告を理解する上で、北大開示文書研究会の殿平善彦共同代表の「刊行にあたって」は、先住権をめぐる歴史と今回の到達点を明晰に解き明かしています。

 これを読めば、「いま何故河川でサケ漁の先住権か?」スッキリと分かります。誰にでもわかる、最高の道案内となっています。

 「北海道は明治政府の支配による入植植民地であり、アイヌ抑圧と収奪により成り立ってきたことを植民者である和人は自覚できないできた。アイヌ先住権を学び応援することで和人は自分の立ち位置をようやく理解する入り口にかかった」と提起している意味は重いものがあります。

 十勝川でのサケ漁獲権確認訴訟に立ち上がった、ラポロアイヌネイションの差間正樹会長が、自ら「私はアイヌです」と発言したのは40歳、など苦悩と自己回復の歩みを告白していることに、深い感銘にとらわれます。

 第1章では、市川守弘弁護士がイチからわかるアイヌ先住権を、難しい内容を誰でもわかる話し言葉で語ります。

 この北の大地と、私たち(アイヌも和人も)が共生する社会を作り上げたいと願わずにはいられません。

 ラポロアイヌネイション、北大開示文書研究会 編 かりん社 定価1000円+税

(「ほっかい新報」7月16日付より)