「ハラスメントについての社会的・国際的到達点に学び、日常活動で生まれた弱点を率直に指摘しあい、克服していく努力」を、日本共産党は第8回中央委員会総会で提起しました。ハラスメントの根拠に向けた努力が日々求められています。

 ハラスメントをなくしていく、起きた場合にどのように対応するのか、その実践の経験がつまった書籍が刊行されました。学生・教職員合わせて2万人超が所属する北海道大学の「ハラスメント相談室」の経験です。設立されたのは2016年、「統一協会」問題の第一人者として知られる櫻井義秀教授が室長です。

 本書は主に、大学というアカデミックの場におけるハラスメントの事例であることから、世間とは少しズレがあるのではと思われるかもしれません。しかし、大学進学率が約56%、短大・専門学校も含めれば進学率が8割を超える現在、自分や家族が高等教育機関に進学している方は少なくないでしょう。本書で紹介されているある大学の事例では、学部生の3人に1人がセクシャル・ハラスメントを受けているといいます。教職員と学生、学生と学生など、学内で起きるハラスメント問題は決して他人事とは言えないのではないでしょうか。

 本書は「世界各国でハラスメント概念の核心に人権侵害をおくことは共通している」と指摘するなど、ハラスメントについて初歩から解説されてわかりやすいことや、世界の状況について紹介されていることも、大変参考になります。また、ハラスメント認定の有無にかかわらず、職場の人間関係や環境を調整することで、問題を改善していく事例など、実践的な対応についても学べる良書です。

 「誰もが、ハラスメントの被害者・加害者・関係者になり得ます。『ハラスメントに聖域なし』は、偽らざるところです」という指摘は、ハラスメントをなくす努力をしていくためにも、肝に銘じる必要があると思います。

 櫻井義秀・上田絵里・木村純一・佐藤直弘・柿崎真実子 著 北海道大学出版会 本体2400円+税

(「ほっかい新報」8月6日付より)