新聞の書評欄で標記の本の紹介があったので、購入して読んだ。私は1948年、十勝・本別町で生まれた。その頃私の父は開拓農家をしており、そこで私は中学まで生活した。父は終戦の時軍人であり、本別町の軍馬補充部というところで獣医をしていた。終戦になり仕事がなくなったので近くの山林を払い下げられ開拓することになったのである。

 本書では、書名に「知られざる拓北農兵隊の記録」とあるように、ほとんど一般に知られていない拓北農兵隊について書かれている。この本を読む前、『黄色い川―北海道戦後開拓・離農農民誌』(菊地慶一著・自費出版・2021年2月10日第2版)という本も読んだが、私もこれらの本を読むまで拓北農兵隊を知らなかった。

 拓北農兵隊とは、国が終戦間際の1945年に空襲で罹災した人たちを北海道の開拓に向かわせ食糧増産に当たらせたものである。募集の際は土地も与え家も提供する、食べ物も与えるような条件であったが、実際はまともに農業できるような土地ではなく家も提供されなかった。食べ物も然りである。いわば空襲で焼け出された人々を厄介払いしたような政策であった。

 私たち一家が開拓した土地はまだよかった方であった。大木は生えていたが、それだけ土地は肥えていたともいえる。それでも苦労はかなりなものであったと思う。開拓農兵隊の方々の苦労は本当に大変だったことがこの本からうかがえる。

 そんなこともあり、体験を書かれている人の多くが戦争だけは絶対してはならないと呼び掛けている。

 終戦から70年以上が経過し戦争体験者は少なくなった今、これらの本を若い人に読んでもらって体験を引き継いでいくことが望まれる。最後にこの本について以下に記して紹介としたい。

 Ⅰ章 拓北農兵隊とは、Ⅱ章 ドキュメント・拓北農兵隊、Ⅲ章 北海道各地に入植した人々が語る拓北農兵隊。

(江見清次郎)

――「ほっかい新報」7月4日付より――