議会傍聴者と懇談する札幌市議団

 札幌市議会第2回定例会は、冬季五輪招致やマイナンバー関連など3期目を迎えた秋元克広市長の肉付け予算(補正)を決め7月11日に閉会しました。審議を通じて、市民の声を聞かない、国いいなりの市政継続が浮き彫りとなりました。

市民の声を聞かない市政継続

 市長選では、2030冬季五輪招致に反対・住民投票実施を掲げる新人候補2人が44%を獲得し、市民の声を聞かない秋元市政への批判票を取り込みました。

 秋元市長は、大きな批判があったと認めながら、五輪招致そのものは見直さず、市民理解と対話を促進する事業の予算を計上。一方で、自ら公約として掲げた子ども医療費の拡大や、もっとも急がれる物価高騰対策に、独自予算を投入する決断を行いませんでした。

 同時に実施された市議選では、県市政に是々非々で臨むという「維新・大地」が誕生し、動向が注目されましたが、五輪招致の住民投票は多額の予算がかかると否定し、主要会派で冬季五輪招致反対は日本共産党だけとう構図は変わりません。

”国いいなり”加速

 国いいなりも加速しています。

 昨年に続き市は、自衛官募集事務にかかる対象者情報として、住民基本台帳のコピーを自衛隊に提供します。6月20日の代表質問で池田ゆみ議員が、市長に「名簿提供をしない場合、法令上の問題はあるのか」と再質問し、市長は法律違反にはあたらないと明言しました。他方で提供に対しては、有識者から「本来は本人の事前の同意を条件」にするべきと厳しい指摘があるなど法的根拠には疑問が投げかけられています。

 名簿提供を望まない「除外申請」は昨年2件でしたが、今年は7月末で198人と大幅に増え、市は「除外申請」の受け付け期限を1か月間延長せざるをえませんでした。名簿提供に固執せずプライバシー権を尊重する立場から提供そのものを中止すべきです。

 また、マイナンバーカード普及の、前のめりの姿勢も問題です。今回の補正で市は、マイナンバーカードの取得者がコンビニで住民票等の交付を受けた場合、区役所などの窓口交付よりも手数料を安くします。市民に平等な行政サービスを保証すべき市が実施することではありません。

優先すべきは、子育て、福祉や医療

 市長は選挙公約「6つの道標」で、「子ども医療費や保育料の無料化の対象をさらに拡大します」「学校給食費への公費負担をさらに拡大します」を掲げましたが、代表質問への答弁は「長期的な財政収支を見通した上で、他の医療費助成制度と合わせ、その拡大の方向性を定めていく」「学校給食費の負担軽減は、今後必要に応じて関係部局と協議してまいる」と、方向性すら示しませんでした。

 合計特殊出生率は、20政令市で最低の1.08となり、コロナ感染症の死亡率は全国平均の2倍となるなど、一番力を入れなければならないのは、住み続けられる札幌市への子育てやくらし、福祉最優先に予算の使い方を切り替えることです。

道内最大規模の開発見直しを

 補正予算で8割近くを占めたのは、道内最大規模の札幌駅周辺開発(「北5西1・西2」)に伴う市有地の売払い金・約222億円です。この売払単価197万円/㎡は、7月3日に発表された近隣地の道内路線価(「北5西3」・668万円/㎡)と比べてもあまりにも安価で適正価格となり得るのか疑問が残ります。

 地権者の市が得られる、事業で建設されるビルの「権利床」を取得しないことによる補償金といえるものですが、再開発を指導・監督する札幌市の公的関与、チェック機能が大幅に後退しかねず、北海道新幹線の需要予測(17700人/日)に基づいた実態に合わない大型再開発に拍車がかかる恐れがあります。

 冬季五輪に多くの反対や疑問が寄せられている一因は、市民の声を聞かず、その関与や合意もないまま計画を進めていることや、本来立ち止まるべき北海道新幹線延伸工事や、2030年都心アクセス道路計画(総事業費1200億円)、駅周辺大型再開発にお金をつぎ込み続けているからです。こうした市政の抜本的な転換にメスをいれられるのは引き続き日本共産党しかありません。

(「ほっかい新報」8月6日付)