2021年2月1日にミャンマーで国軍による軍事クーデターが起きてから2年以上、民主化を求める市民のたたかいが続いています。同時に、国連人権理事会によれば130万人以上が住まいを追われ、3000人以上の民間人が殺害、16000人以上が逮捕・投獄されています。しかし、時の経過やロシアによるウクライナ侵略もあり、報道ではその情報に接することがほとんどなくなっています。

 そうしたなか、ミャンマーの民主化のために情報の発信や東アジアでの市民の連帯を願い、北海道大学のアジアメディア研究センターが22年8月~12月・全五回で「ミャンマーを知る市民講座 民主主義のために連帯」を開催し、その内容が本書にまとめられました。

 人権をまもり、平和を願うみなさんに、同じ地域に住む人々との連帯を強めるためにも、ご一読をお勧めします。

 本書は第1部「ミャンマーで起きていること」、第2部「在日ミャンマー人の奮闘」、第3部「連帯する日本の人々」、第4部「【座談会】グローバル時代の国家暴力―東アジアの経験を手がかりにして」の全4部から構成されています。

 第1部では、専門家から21年のクーデターに至る経過や国際社会への働きかけなどが紹介されています。第2部・第3部では、日本各地の在日ミャンマー人と、連帯して活動する日本人がそれぞれの視点から活動を紹介し、支援を呼びかけています。

 北海道で活動しているトゥン氏は国軍によってFacebookなどが監視される危険に瀕しながらも、クーデター直後から札幌市の大通公園で抗議集会を開催するなど、多彩な活動に取り組んでいることを紹介しています。

 第4部では、ナンミャケ―カイン京都精華大学特任准教授、玄武岩北大教授、藤野陽平北大准教授の座談会で、国際社会からの支援のあり方を、東アジアでの経験を通して考えながら、インターネットの発達など現在の新たな可能性について言及し、国家による暴力に対抗する市民の連帯のあり方を考えるものとなっています。

 「当事者でない人々が理解したとき、社会は動く」、本書のなかで紹介されている高校生の言葉です。入管法改悪反対に多くの市民が声をあげているように、”日本人”にとっては”当事者”ではないかもしれませんが、国家による”暴力”からいのちと人権をまもることは私たち一人一人の市民にとって決して”他人事”ではないと考えさせられます。

玄武岩・藤野陽平・下郷沙季 編著 寿郎社 定価1100円+税

(「ほっかい新報」6月11日付より)