昨年7月の安倍元首相の殺害事件から一年。安倍氏が統一協会の最大のシンパと信じた山上による犯行だった。

 いま改めて「統一協会とは何者なのか」が問われている。それを全面的に究明した新刊が出た。

 宗教社会学の泰斗、櫻井義秀教授(北大・文)の中央公論新社刊『統一教会~性・カネ・恨から実像に迫る』がそれである。新書版ながら328ページに及ぶ。協会を濃密に究明、さながら百科全書といえる労作である。

 その柱は、①統一教会が韓国で宗教的財閥となり、日本では霊感商法を行うカルトになって行く経過、②日本の女性信者が韓国に嫁いで生活しなければならない状況が何故起きたのか、③日本の信者達が韓国の教祖ファミリー協会と幹部に全てを捧げるまでに支配される精神構造、④日本は統一教会にどのように対処すべきか―を徹底的に究明して行く、と。

 第1章は、メシアの証し~文鮮明とは何者か。特に再臨主の死と相続争いは世俗的で興味津々であり、グイーと引かれる。

 第2章は、統一原理と学生たち~勝共連合による日本宣教。67年笹川良一・岸信介との関わり、キリスト教系宗教から多国籍型宗教団体へ、など興味深い。

 第3章は、統一協会の布教、霊感商法、献金が内部構造に立ち入り、究明されていく。「先祖解怨」が高額献金に導く。

 第4章は、祝福と贖罪。信仰とジェンダー不平等が糾明される。第5章は、統一協会の現在と未来。いま問題の解散命令請求と宗教規制が、問われる。被害者救済、二世信者も。

 この新書は、急遽企画されたと誤解されるが、もう10年前から依頼されていた。重厚な本書は、未来に長く残る貴重な貢献とされよう。含蓄深い労作である。

 櫻井義秀 著 中公新書 1056円(税込)

(「ほっかい新報」8月13日付より)