性的少数者や同性婚への差別発言を首相補佐官(当時)が行ったことは記憶に新しい。G7サミットの開催国でありながら唯一、LGBTQの権利を守る法整備がされておらず、日本を除く各国から法整備が促される始末です。

 北星大学での卒業研究を基にした本書は、「聞き書き」という狙いの通り、語り手の存在をリアルに感じさせます。

 登場するのは4つの家族。20代から50代までと年代はバラバラだが、愛し合う二人が子どもを迎え、周りとの関係や子育てに悩み、苦労をしている姿が目に浮かんできます。子育ての悩みなどは「そうそう」と共感するものばかり。

 しかし、同性カップルということで婚姻が認められないために、医療や相続などでの困難や、職場や親族との関係への不安など、異性カップルとは違う切実な課題が山積しています。同性カップルに婚姻が認められないことの不平等さが、読む人に伝わる内容になっています。

 今、全国に広がっているパートナーシップ制度に対する当事者としての指摘があり、同性婚の平和実現が必要であることもよくわかります。

 本書のなかで、同性カップルやその家族が安心して暮らせる社会を一緒につくるために、声をあげることが呼びかけられています。同性婚を実現し、LGBTQへの差別を許さない社会をつくることは誰かの課題ではなく、私たち一人ひとりがなすべきことです。ぜひ、多くの方に手を取っていただきたい1冊です。

遠藤あかり 大島寿美子 著 寿郎社 定価1100円+税

(「ほっかい新報」5月7日付より)