3月24日に立ち上げられた「軍拡NO! 女たちの会・北海道」の呼びかけ人の一人である山口たかさんに、「会」をつくられた思いやこれからの取り組みについてお聞きしました。

新たなつながりを広げながら、軍拡にNO

 日本国憲法は国際紛争を解決する手段として武力を行使しないと謳っているのに、ロシアによるウクライナへの侵略や「台湾有事」などを口実にして、「安保関連3文書」を閣議決定し、「敵基地攻撃能力」を保有するというのは許せない―という思いがありました。

 そうしたなかで、田中優子さん(法政大学前総長)や作家の雨宮処凛さんたちの呼びかけで「平和を求め軍拡を許さない女たちの会」がつくられ、友人と3人で北海道でも「軍拡NO! 女たちの会・北海道」をつくろうと話し合いました。

 会を立ち上げるのに19人の方が呼びかけ人になってくれました。賛同者も今、120人ぐらいになっています(4月初旬時点)。医療関係者、教員の方など幅広い方が呼びかけ人になってくださり、今までいっしょに活動したことがなかった人たちとも取り組めていることに運動の広がりを感じています。

「新しい戦前」になるかもしれない

 今の状況は、集団的自衛権の行使容認、安保法制の成立からきている流れです。国会で問題になっている放送法の解釈変更とか、政府は着々と準備を進めてきて、国民が異議申し立てをできないようにしてきました。

 「日本が戦前の十五年戦争に入った頃にとても似ている」という方がたくさんいらっしゃいます。(芸能人の)タモリさんも言ったように、今年が「新しい戦前」になるかもしれない、もう「新しい戦前」に入っているんですよ、という認識で私たちはいます。

「権利」を飾るのではなく、行使して

 私の父は学徒出陣で戦場に行った世代です。時々、酔っ払って戦時中の話をしてくれました。母も勤労動員で工場へ動員されたそうです。私は「戦争にどうして反対しなかったの」って、何度か聞きました。そうしたら、「そんなの言えるような雰囲気じゃなかった」と。むしろ、女性たちは国防婦人会とかで、夫や息子を送り出していました。

 私はそういう「銃後の女たち」にはなりたくない、それを阻止するのは今しかないと思いました。当時は選挙権がなく女性は意思表示ができませんでしたが、今は、声を出すことができます。

 「ヤジポイ」の判決もそうですが、声を出すことは、憲法で「表現の自由」として保障されています。だったら、権利を飾っておくのではなく、行使しなきゃいけないと思っています。

 草の根で一人ひとりが、性別に関係なく誰でも声をあげられる場を作ることが大事だと思います。

市民との共感を広げるために

 自衛隊員の出身地別では、7人に1人が北海道で全国最多です。仕事がなくて、就職先として選ばざるを得ないという経済的な事情もあると思います。

 ロシアと北海道の距離感から不安をもっている方が少なくないという現状もあるのではないでしょうか。

 また、岸田首相は「専守防衛は変わりません」と平気で言ったり、「輸出武器」を「防衛装備移転」と言い替えたりと、今まで政府ができなかったことを平気で壊していく、とても怖い状況だと思います。

 そうしたなかで、「平和の思い」を市民のみなさんに共感してもらえるようにしていきたい、と考えています。先日、すすきので街頭宣伝をしていると、「やられたらやり返さなきゃ」と言う若い男性に、「戦争っていうのは外交の失敗でしょ?」という話をすると、「そうだよね。結局それで行かされるのは俺らだよね。マイク貸してください」と言って、「戦争反対、憲法守れ」と話してくれたんです。新聞やテレビのニュースを見ていないという人とも、スタンディングとかでは直接顔を合わせることができるので、街頭での訴えも大事です。

 多くの方の共感を広げる上で、軍拡がもたらす影響について、社会保障費の削減や増税など、暮らしに関わるところで訴えていくことも必要だと思っています。

つながりは緩やかでも、軍拡NOの意志は固く

 「会」のメンバーは目指している方向は同じですが、世代や経験の違いもあって、チラシ1枚をつくることなどにも、すごい議論をしています。トップダウンで決めて、任せきりにするのではなく、時間がかかっても話し合って決めることが非常に大事だと思っています。会議もリアルとZoomのハイブリッド型にして、できるだけ多くの人が参加しやすいようにと心がけています。

 「会」のあり方も広報やSNSとか事務担当は置くけれども、共同代表や事務局長は置かないようにしようかなど、様々なことを検討しています。「軍拡NO! 女たちの会・北海道」は緩やかだけれども、強固な意志をみんな持っていて、つながっていることが大事だと思っています。

(「ほっかい新報」5月7日付より)