市政報告を聞き懇談する市民ら=8日、札幌市

 第3回定例会開会を前に、秋元克広市長は、政令市最低となっていた子ども医療費助成(通院)を拡充すると記者に説明。10月6日には、足掛け10年となる冬季オリンピック・パラリンピックの「30年招致断念」を表明しました。

 市民の世論と運動が切り開き、党市議団が議会論戦で後押しするなか、「五輪よりくらし・福祉が優先」の願いが実りはじめました。

■市民不在の招致が破綻

 市長は10月11日、国際オリンピック委員会(IOC)の総会に出発する山下泰裕会長と会談し、34年以降招致を目指しますが、それも「絶望的」と報じられ、IOCと「継続的な対話」を続けると説明しています。

 断念の理由は、市民の支持や理解が得られなかったためです。招致活動を続けた、足掛け10年の取り組みを率直に検証する作業が必要です。

 もともと圧倒的な市民は、理解も賛否も問われることもなく、市政に声が届かないとみた市民は、「不招致」デモや宣伝、「住民投票」を求める請願・陳情などを繰り返してきました。9月27日から市民が始めた住民投票を求める直接請求署名は、市民不在の招致活動への対抗手段であり、国内候補地の住民が招致を支持していないことを、国内外に示し、当然IOCにも届き影響を与えたとみるべきです。

■検証と見直し作業を

 第3回定例会の決算特別委員会やオリ・パラ調査特別委員会で、委員の小形かおり、さとう綾両市議が、オリ・パラ基金に造成した約50億円を一般財源に戻して活用することや、国の補助金が見通せない新月寒体育館の建て替え計画、札幌ドーム周辺のスポーツ交流拠点基本構想などの見直し、第三者機関も想定した検証作業の必要性――などを追及しました。

 北海道新幹線の札幌延伸は2030年に間に合わないとされ、まちづくりの起爆剤とされたオリ・パラ招致が断念されるなか、市内中心部の再開発計画など、まちづくりについても抜本的な見直しが求められます。

 今後、2024年度予算編成の作業に入ります。「五輪招致」を前提とするのかどうかで、一連の見直しの方向は変わります。

 自らの後援者(経済界)からも「白紙を」と助言される五輪に固執することはやめ、まちづくりの抜本的な見直しを進めることを求めます。

■子ども医療費助成が一挙拡大

 政令市の中でも遅れた水準だった、子ども医療費助成制度(通院)について、市は24年度から中学3年、25年度から高校3年まで拡大すると表明し、まちづくり戦略ビジョン2023(案)に盛り込まれました。

 制度は道の補助事業に、札幌市が上乗せ助成する仕組みなので、市独自の対象拡大に消極的だった市政の転換を求めてきた関係者には、大きな成果として歓迎されました。

 ここにも、札幌市乳幼児医療費助成制度ができた1973年から、対象年齢を拡大する運動を積み重ね、2009年に「子ども医療費助成条例」と改称してからも制度を発展させてきた市民や当事者の長年の運動があります。

 初診時の一部負担金や所得制限などの課題は残されています。今後、完全な無償化となるように力を合わせていく決意です。

■現行保険証存続を求める意見書が採択

 政令市では初の「現行の健康保険証の存続を求める意見書」が日本共産党の提案、維新以外の賛成多数で採択されました。

 調整段階でマイナンバー関連で発生したトラブルを記述した場所は削除せざるを得ませんでしたが、他の会派からも、紙の保険証を残してほしいという市民の意見が寄せられているとの話もされ、市民の声が無視できなくなってきたことが大きく影響しました。

 8日に行われた第3回定例会の市政報告会では、各団体や個人20人が参加し、市議団と様々な要求課題で意見を交流しました。

 市民の運動と議会論戦の努力が、時間をかけてでも市政を動かしてきたことを確信に、引き続き市政変革に取り組む決意です。

 千田悟・市議団事務局長

(「ほっかい新報」11月19日付より)