北海道新幹線の札幌延伸に伴う札樽トンネル(小樽―札幌間26・2キロ)工事で、発生する残土から人体や生態系に害を及ぼす猛毒のヒ素、鉛がそれぞれ基準値の最大190倍に―。事業主体の鉄道運輸機構と札幌市が3月28、29両日に開いた秋元克広市長出席の手稲区山口地区住民説明会での資料で判明しました。

 資料は、札樽トンネルの3工区(星置、富丘、札幌)それぞれから出た残土について、水1リットル当たりの溶出量を示した表を掲載しています。ヒ素、鉛ともに、溶出量の基準値は0・01ミリグラム以下。

 札幌工区の土から最大1・9ミリグラム(190倍)のヒ素が、富丘工区も0・73ミリグラム(73倍)の高濃度のヒ素が測定されました。

 ヒ素基準値を超えたサンプル数は、星置工区21のうち7、札幌工区102のうち34と、おおむね3割。一方で冨岡工区は58のうち46(79%)が超過しています。

 鉛は、星置工区で190倍に当たる1・9ミリグラムを測定。カドミウムは全3工区で、セレンは星置と札幌、水銀は札幌工区で基準値を超えています。

 残土問題で道内各地を調査してきた日本共産党のはたやま和也前衆院議員は「道新幹線の2030年度末の札幌開業にこだわり、命と健康を後回しにしてはなりません。説明会の範囲を星置地区などの近隣住民の求めに応じて広げるべきです」と話しています。

「議会にデータ示すべき」佐々木市議

 札幌市議会総合交通調査特別委員会が3月26日開かれ、鉄道運輸機構が参考人として説明しました。議会には、残土中の重金属の濃度を示す表など、2日後の住民説明会に盛り込んだデータを省いてありました。

 市新幹線推進室は、市議会に詳細な資料を示さなかった理由を、「議会へは残土搬入予定地の対策検討状況を説明することが目的であり、住民説明会と違う」と話しました。

 日本共産党の佐々木明美市議は「運搬に伴う粉じんや地下水のデータなどを議会に示すべきです」と市の議会軽視を批判しました。

(「しんぶん赤旗」4月10日付より)