貴重な資料を使って講演する大門氏

 3月30日、日本共産党北海道委員会が札幌市内で開催した「北海道の経済『再生』を考えるシンポジウム」には、会場いっぱいの約400人が参加しました。

 シンポジウムは第1部と第2部に分かれ行われました。第1部では、大門実紀史前参議院議員が日本共産党の「経済再生プラン」について基調講演を行い、真下紀子党道議団長と紙智子参議院議員が特別報告しました。

経済停滞の二つの「レール」 「失われた30年」から抜け出す

 大門実紀史氏は日本と北海道の経済が成長できなくなっている現状を示しながら、その要因として、二つの「レール」が敷かれてきたことがあると指摘。一つは、財界いいなりに労働法制の規制緩和を進め、派遣労働や非正規雇用を増やしてきたことで、非正規も正規も賃金が上がらなくする「レール」です。

 もう一つは、高齢化によって増加するはずの社会保障の自然増分をカットし、社会保障を改悪し続ける「レール」です。

共感を呼ぶ「経済再生プラン」

 この二つの「レール」から抜け出して、日本経済を再生するために、賃金の引き上げと社会保障の充実などを柱とする「経済再生プラン」(①政治の責任で賃上げと待遇改善をすすめる②消費税減税、社会保障充実、教育費負担軽減③気候危機打開、エネルギーと食料自給率向上)を大門氏は紹介しました。

 「経済再生プラン」を読んだ経済界の関係者から、「よく考えられている。大企業も(内部留保を)ため込みすぎていることはわかっている。けれども、自分の企業だけではできない。大企業全体に網をかけてくれると助かる」と言われたエピソードを語りました。

 大門氏は「(野党が)いくらいい政策をつくっても実現しないのではと思っている方もいるかもしれませんが、全然そうではありません」と、東日本大震災の際のグループ補助金やコロナ禍の持続化給付金など実現してきた実績をあげました。

政治の責任で賃上げを

 大門氏は内部留保課税と非正規ワーカー待遇改善法の二つを実現し、政治の責任で賃上げを進めることを提起しました。内部留保課税は、この10年間に大企業がためた分に2%の税率をかけることで、約10兆円の財源をつくります。その財源を利用して、中小企業への支援に回すというものです。

 また、非正規雇用の7割が女性である実態を示し、女性の労働が家計の補助のように扱われて待遇が低く抑えられてきたことについて、「雇用形態を通じた女性差別という構造の問題としてとらえないと改善につながらない」と指摘。労働組合や弁護団とも力を合わせて、待遇改善を求めていく決意を語りました。

中小企業に適切な価格転嫁を

 政府が中小企業は生産性が低いから、賃金が上がらないということについて、大門氏は中小企業庁の資料を示しました。大企業も中小企業も生産性には大きな違いがないにもかかわらず、大企業が価格転嫁をできる一方で、中小企業は価格転嫁ができない状況に置かれている問題があることを明らかにしました。そして、中小企業が価格転嫁できるような仕組みを提案していきたいと語りました。

社会保障は経済

 社会保障給付費は131兆円・対GDP比23%(2022年度)を占めています。大門氏は患者が医療にかかれば、その支払いが医療機関の収入となり、職員の雇用にもつながり、関連会社にも波及するなど、経済の活性化につながっていることを例として提示。スウェーデンを調査で訪問した際に、「社会保障は経済です」と言われたことを紹介し、社会保障をよくすることは、経済もよくすることにつながると語りました。

 大門氏は最後に、北海道経済再生のために、①賃金の引き上げ②社会保障の充実③農業の再生、を3つのキーワードにしていくことを呼びかけました。

北海道経済の課題

 真下紀子道議は「北海道経済の課題について」語りました。

働く人の4割が非正規に

 北海道内の雇用の問題について真下氏は、非正規雇用が2013年から22年まで85万人で推移し、働いている人の4割が非正規になっている現状を紹介しました。また、消費者物価指数が年平均9%余り上昇していることから、実質賃金が減少し、全国36位の低水準となっている、道民の苦しい生活状況を示しました。

地域産業の支援こそ

 鈴木道政がラピダスを中心とした半導体産業への集中した支援と、GX(グリーントランスフォーメーション)を口実とした原発再稼働を狙っている問題を、真下氏は告発しました。そして、国主導の大型プロジェクト優先ではなく、住民の福祉増進の立場で、地域の産業支援に力を入れることを提起しました。

ジェンダー平等の北海道へ

 真下氏は都道府県別ジェンダーギャップ指数で、北海道が経済、行政、教育の3分野で最下位の現状を述べ、北海道庁の女性職員の雇用状況について取り上げ、部長職、課長級、係長級いずれにおいても、目標に届いていないことを明らかにしました。

 「政策の決定過程に女性の意思が反映できにくい仕組みになっていることが非常に問題です」と厳しく指摘し、女性も男性も人間らしく働ける社会にしていくことを呼びかけました。

農業再生へ、農政を大元から変える

 紙智子参議院議員は、「経済再生プラン」の3つの柱の一つである、農業問題について特別発言を行いました。

食糧自給率は危機的状況

 紙氏は食料自給率が38%まで落ち込んでいる現状を示しながら、「過去25年間で食料自給率の目標を一度も達成したことがない」と指摘。会計検査院から目標が達成できなかったことの検証がされていないと指摘されているにも関わらず、農水省は「国民の食べ方が変わったから」と消費者側の責任に転嫁していることについて、農業政策の見直しが必要だと訴えました。

農業で暮らせる土台作りを

 稲作農家の所得は2021年に、時給換算すると10円という衝撃的な数値が公表されました。紙氏は生産者ががんばっても生活が成り立たない仕組みになっていると告発し、「農業、農村で暮らせる土台を政府の責任でつくらないといけない」と政治の責任で農政を変えていく重要性を語りました。

 そして、軍事費を11兆円にするのではなく、「食料生産を増やすためには、農業に予算を抜本的に増やさなければ」と訴えました。

(「ほっかい新報5月5日付」)